日韓関係:互いを敵視してしまうのはなぜなのか
古谷有希子 | ジョージメイソン大学大学院社会学研究科博士課程
2019/9/20(金)
以前掲載した日韓関係に関する記事を見た韓国のタンジ日報社から、日韓関係について日本の立場を説明する記事を書いてほしいという依頼を受けて、記事を寄稿した。(韓国語原文も筆者が執筆)
せっかくなので日本の読者にも読んでもらいたいと思い、ヤフーで日本語版を載せることにした。
日本語に直すにあたって日本向けに少し表現を変えている部分もあるが、ほぼ原文通りである。
(以下、記事本文)
先日、「日韓関係の悪化は長期的には、日本の敗北で終わる」という記事を日本のニュースポータルサイトに寄稿し、日本のみならず韓国の人たちからも大きな反響があった。
私は韓国の専門家でも日韓関係の専門家でもないが、韓国に関する研究に一時携わり、韓国に住んでいたこともあり、現在の日韓関係を深く憂慮している。
上述の記事では、日本政府がいくら歴史修正主義的な「歴史戦」を展開しても、成果を上げることはできないという前提で、なぜ最近の韓国が日本(日本政府、日本人)の神経を逆なでするような行為を取るのか、ということを論じた。
民主化以前と以降の韓国社会が全くの別物であり、独裁政権下で国民に内容を秘匿した状態で結ばれた日韓基本条約をそのまま受け入れることは、現在の韓国の民衆にとって心情的に納得できない部分があること、さらに近年の経済発展が韓国に自信を与え、日本と対等な交渉をしようとしていること、などを論じた。
なぜ韓国政府が従来の日韓関係を傷つけるような態度を取り、韓国の人々が「反日」的な行為をするのか、日本の人々が理解できるように客観的に説明したつもりだったが、日本人読者からは「なぜ日本人であるあなたが韓国の立場で語るのか」という拒否反応が多く、たくさんの日本人から「反日的だ」と非難された。
最近の日本の「嫌韓」
私は米国に住んでいるので、常に日本社会や日本のメディアに触れているわけではないが、それでもわかるほど、日本の人々は恒常的に嫌韓的なメディア報道に晒され、それを内面化している。
「慰安婦」「徴用工」といった問題の存在自体を全否定するネット右翼のような極端な人たちでなくとも、慰安婦問題や徴用工問題で日本政府はもう少し柔軟な対応をすべきではないかと論じると、「すでに日韓基本条約で補償は済んでいるのだから日本は関係ない」という反応をする人は少なくない。
日韓両国とも、相手国に対する感情はマイナス傾向だ。
言論NPOの実施した第7回日韓共同世論調査によれば、約5割の日本人の回答者の約5割が韓国にマイナスの印象を持っており、その理由で最も多いのが、「歴史問題などで日本を批判し続けるから(52.1%)」である。さらに今年は「徴用工判決(15.2%)」と「レーダー照射(9%)」もマイナス印象の理由の上位であった。
同調査では約5割の韓国人も日本にマイナスの印象を持っており、その理由としては、歴史問題と領土問題(独島)が半数を超えている。とりわけ今年は「韓国を侵略した歴史を正しく反省していない」が76.1%と高かった。
こうした反応を見ると、日韓関係が良くなることは今後あるのだろうか、と考えずにはいられない。
ホワイト国除外措置について日本経済産業省が実施したネット世論調査では、98%が賛成を示している。各種報道機関の実施した世論調査でも、五割から七割の回答者が今回のホワイト国除外措置を適切であると考えているという結果が出ている。
日本では韓国などどうでもいい、関わらない方がいい、という論調が台頭しつつある。
韓国では、日本の韓国ホワイト国除外を受けて、「反安部」運動が起こっているが、「嫌韓」が恒常的にあふれかえっている日本の状況は安部政権の責任ではない。
むしろ嫌韓的な日本の世論に後押しされているのが安部政権なのであって、安倍政権が積極的に嫌韓を扇動していると考えるのは、日本全体が嫌韓であるとは信じたくない韓国人のナイーブさの表れであろう。
一方の韓国でも、日本などどうでもいい、という風潮が広がっている。
日本による韓国のホワイト国除外措置を受けて、韓国も日本を貿易優遇国から除外し、さらにGSOMIA破棄を決定した。
韓国政府の対日強硬策にはGSOMIA破棄決定前に実施された世論調査で約5割の回答者が破棄を支持していたことも影響を与えたはずだ。
ここまでくると、政府レベルでも民間レベルでも両国が手放しの友好関係を築くのはかなり難しいように思われる。
たとえ一時的に友好関係を築いたとしても、日本が歴史修正主義を繰り返し、韓国が歴史問題で怒り続ける限り、両国関係の土台はいつまでも不安定だ。
日本会議が自民族中心主義的傾向が強いことは事実としても、日本人の歴史認識が韓国人よりも誤謬が大きいとはとても言えない。古谷の主張は誤っている。どちらの歴史認識がより正しいのか、という点をはっきりさせなければならない。
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