2019年9月22日日曜日

古谷有希子 の主張は不十分である__その3


韓国の人々は、日本の政府要人が慰安婦問題を否定したり、靖国神社に参拝するなどの歴史修正主義的言動を繰り返すことこそ両国関係を不安定にする根源であると考えているようだが、歴史修正主義的思想は日本人全体に広がりつつある。
 今では日本の政治家が歴史修正主義的な発言をしても、厳しく批判する主要メディアなど皆無だし、日本の世論もそうした政治家の発言を大々的に問題視しない。

歴史を記憶しない日本人
信じがたいことだが、終戦記念日はおろか広島・長崎の原爆記念日を知らない日本人も若年世代には少なくない。
たとえば、NHKが実施した18歳と19歳に対する世論調査では14%が終戦記念日を知らない、と回答した。

韓国では日本の歴史の授業が第二次世界大戦や韓国の植民地化について教えていないと信じている人も少なくないようだが、そんなことはない。
そもそも日本の教科書検定は政府による検閲ではなく、客観的に学術上必要な内容が含まれているかどうかの審査なので、現政権の思想に合致しない内容だと合格しない、ということはない。

確かに韓国の歴史の授業における植民地期の取り扱いと比べれば、日本で韓国の植民地化について教える分量は少ないが、第二次世界大戦全体ではそれなりに厚みのある内容を学ぶ。
何より、毎年夏には第二次世界大戦に関するドラマやドキュメンタリーが流れ、原爆記念日に関するニュースや戦争の悲惨さを伝えるドキュメンタリーなども放映される。

だが日本人は、自分たちがしたことも、自分たちがされたことも含めて、歴史を忘れていく。

そして、最近ではそうした戦争に関するドキュメンタリーやドラマもどんどん減っている。

世代を超えて歴史を記憶し続ける韓国人と、歴史を忘れていく日本人では理解しあえないのも当然だ。

歴史を記憶し続ける韓国人は、祖先たちの受けた仕打ちを自分たちの記憶として内面化し、「日本の歴史修正主義と戦う」自国に自分たちを重ねる。

歴史を忘れていく日本人は、日本は国家としての対韓賠償は済ませたという事実だけを今のニュースで知り、「解決済みの問題で韓国に理不尽に責められている」自国に自分たちを重ねる。

経済的損失に対する経済的報復を、歴史問題への報復と捉えてしまう韓国

韓国では今回の日本の措置は歴史問題に関する報復と捉えらえているが、日本政府にとって今回の措置は、歴史問題に関する報復というよりも、徴用工問題における大法院判決によって日本企業の資産が差し押さえられている経済的損失に対する経済的報復という側面が強い。

そもそも、1965年に締結された日韓請求権協定では、両国間の請求権に関する問題は「完全かつ最終的に解決されたこととなる」、「いかなる主張もすることができない」と明記されている。

しかも、請求権協定は日韓基本条約で、1910年の韓国併合が「もはや無効」であることが確認されたうえで締結されている。

日韓両国の政府・司法は数十年間、この立場を共有してきた。

だが、盧武鉉政権下の2005年、韓国政府は請求権協定について「慰安婦」「被爆者」「在サハリン韓国人」について、個人請求権は放棄されていないとして、従来の判断を覆した。

一方で、韓国政府は徴用工について「他の3つとは一緒にできない」「法的には解決済み」としていた。しかも、この決定には当時、廬武鉉政権の高官であった文大統領も関わっている。

それが2018年の大法院判決では、日韓併合は「もはや無効である」というのではなく、「そもそも無効だった」という、韓国内では広く受け止められている主張を採用して、元徴用工への慰謝料請求を認めた。

「もはや無効」と「そもそも無効」
「もはや無効」と「そもそも無効」という両者の間には大きな隔たりがある。

これは、植民地支配が当時の国際法上有効であったのか、当時の国際法上からも無効であったのか、65年に締結された日韓基本条約や請求権協定の根本を覆すほどの解釈の違いである。

つまり、韓国大法院は韓国内で広く受け入れられている植民地支配はそもそも不法だという立場に立って、請求権協定とは関係なく、不法行為の慰謝料を元「徴用工」に支払うべきだ、という論理を適用したのである。

韓国は朝鮮時代の朱子学的党派の「文法」を受け継ぎ、過去の歴史への介入をしているのだ。

これによって、彼らの言説に歪みや自己撞着が起きている。ぼやぼやしていると日本人もそれに巻き込まれていくのである。今日の各種の軋轢の大きな要因となっている。

0 件のコメント:

コメントを投稿